
■枯淡苑のコメント
"読書する一人の人間には二人分の価値がある"
1936年に、"若者の、若者による、若者のための"書店・出版社・貸本店〈真の富(ヴレ・リシエス)〉を構え、のちに長きに渡り出版人として活躍した青年シャルロの半生を描いた小説。原題は「Nos Richesses(僕らの富)」
ちなみに、店名は「木を植えた男」で知られるジャン・ジオノのエッセイからとられています。
シャルロの手帳を元にした日記、本嫌いの少年、そして植民地であるアルジェリア独立運動に対するフランスの抑圧という3つの視点を織り重ねながら、シャルロが書店経営を通して得た瑞々しい体験と苦悩を描き出した青春小説ともいえる構成です。
シャルロとゆかりがあったカミュや、サン=テグジュペリなど西欧の作家も多く登場。
地中海の街並みや歴史を感じられる人物・風景描写も巧みで、『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』が好きな方にもおすすめです。
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■紹介
1936年、アルジェ。21歳の若さで書店《真の富》を開業し、自らの名を冠した出版社を起こしてアルベール・カミュを世に送り出した男、エドモン・シャルロ。第二次大戦とアルジェリア独立戦争のうねりに翻弄された、実在の出版人の実り豊かな人生と苦難の経営を叙情豊かに描き出す、傑作長編小説。
ゴンクール賞、ルノドー賞候補、〈高校生(リセエンヌ)のルノドー賞〉受賞!
一九三六年十一月十九日
開店以来、大勢のお客さんが《真の富》に押しかけ、本を買ったり借りたりする。客たちはけっして急いでおらず、あらゆることについておしゃべりしたがる。作家たち、表紙の色、文字のサイズ……。客はとりわけ教師や学生や芸術家だが、小説を買うために金を貯めている労働者もいる。大冒険が始まった。
一九三九年一月三十一日
『結婚』という美しい表題のついたカミュの原稿を読む。ここには人がアルジェリアで体験することのすべてがある。すごく感動し、興奮した。彼とその話をするとしたら、僕とアルベールのあいだにある奇妙な遠慮のせいで、この感激を抑えなくてはならないだろう。五月にこれを、大部数で出すつもりだ。初版千二百二十五部。
(本書「エドモン・シャルロの手帳」より)
■目次
アルジェ、二〇一七年
第一章
アルジェリア、一九三〇年
エドモン・シャルロの手帳 アルジェ、一九三五年―一九三六年
第二章
アルジェ、一九三九年
エドモン・シャルロの手帳 アルジェ、一九三七年―一九三九年
第三章
ドイツ、一九四〇年
エドモン・シャルロの手帳 アルジェ、一九四〇年―一九四四年
第四章
セティフ、一九四五年五月
エドモン・シャルロの手帳 パリ、一九四五年―一九四九年
第五章
アルジェリア、一九五四年
エドモン・シャルロの手帳 アルジェ、一九五九年―一九六〇年
第六章
パリ、一九六一年
エドモン・シャルロの手帳 アルジェ、一九六一年
第七章
アルジェ、二〇一七年
参考資料
謝辞
訳者あとがき
■著者プロフィール
カウテル・アディミ (カウテルアディミ) (著/文)
(Kaouther Adimi)1986年、アルジェ生まれ。2011年に発表したデビュー作L’ENVERS DES AUTRES で、18歳から30歳の作家を対象にしたPrix litteraire de la vocation を受賞。長編第三作の本書NOS RICHESSES で2017年のゴンクール賞、ルノドー賞の候補となり、〈高校生(リセエンヌ)のルノドー賞〉を受賞した。
平田紀之 (ヒラタノリユキ) (翻訳)
1946年東京生まれ。横浜市立大学卒業。翻訳家・編集者。訳書に、ビアトリス・ホーネガー『茶の世界史――中国の霊薬から世界の飲み物へ』、ドン&ペティ・クラドストラップ『シャンパン歴史物語――その栄光と受難』(以上白水社)などがある。
■その他商品情報
出版:作品社
判型・頁数:248ページ
発売日:2019年11月25日